私どもケーズエンジニアリングでは、トヨタ生産方式の考え方による改善コンサルティングを通じ、数多くの改善リーダーを育成するサポート活動をさせて頂いております。

改善エッセイ

第47話 原価低減-2 - 量産効果?または量産降下? -

2014年4月22日

  原価低減は、第10話原価低減―1ではTOPの「原価低減意識」についてお話しましたが、

  この「意識」とは「言うだけ」ではダメであり、TOP自らが「強い意識」と「先頭に立って行動」することで、

  原価低減(Cost Reduction;CR)の目標が達成できるのである。

  例えばTOPが「CR50%目標達成」と力強く宣言し、先頭に立って行動すれば、達成できると信じている。

  もし、それが出来ないとなれば、それはTOPが部下から信頼されていないと自ら思うべきである。

   TOPは社長がBestであるが、それが事業部長であっても良いし、プロジェクトのリーダーでも良い。

  いずれにせよ、TOPの意志と行動が目標達成の決め手になる。特に日本国内はそうである。

   それだけ目標設定は重大なコトなことである。

  その目的が単に「利益率5%達成のためにCR10%」と言うのではホトンド達成できないのが普通である。

   昔、ある会社の経理担当役員と話をしていた時、「利益率5%は絶対に達成したい」と

  力強く言われていたので、私が「もし達成しなかったら、自ら会社を退社されますか?」

  と聞いたことがある。

  「強い意志」とはそれだけの決心がないとダメで、その強い意志に関係する人が引っ張られて、

  目標は達成できるのである。

   昔の武士は「自ら退路を断つ」と言った。

  次はTOPとしての戦略、プロジェクトならリーダーとしての方向性である。

 

   1972年秋、私が社長からセンチュリー100万円原価低減の関東自動車側の

  プロジェクトリーダーを指名されて、大野さんの所に行った話は既に第4話で話している。

  (第4話での西暦は全て1972年が1971年になっている、第29話も同様1972年である)

  大野さんの所には毎月改善報告に行っていた。

  たぶん、12月か1月の報告の時、私が、

  「センチュリーは1日4台なので量産効果があまりナイので、余り工数低減は出来ませんでした。」と説明した。

  そのとき大野さんが「量産効果とは何だネ?」と聞いてきた。

  私 「ある機械で一時にある製品を造ることです。」

  大野さん 「例えばプレス機で1回4個のものを400個造るのが量産効果か?」

  私 「はい。」

  大野さん 「センチュリーは1日40台造ると量産効果が出て工数が減り、コストが下がる

             ということか?」

  私 「はい。」

  大野さん 「センチュリーは現在月80台しか売れないネ。それを1日40台造るというの

            は2日で造るということだネ。残り18日はどうする?休む?給料はどうする?

            又はトヨタ自販に言って、月800台売ってくれと頼むのか?自販は売価を半分

            にしろと言うだろうネ。

            現状でコストハーフは出来るのか?今ですらトヨタ自工は100万円損して売っているのだ。」

           「量産効果は良い設備でタマタマ量を多く買ってくれるお客が居る時のみにしか、

            その瞬間にしか発生しないコトだ。

            俺はこの年までに量産効果に出会ったことがない。

            大学の先生の言うことを余り真に受けるナ。それは一瞬のことだ。」

  たまたま鈴村さんが会話の中に入ってきて、

  「瞬間的には量産効果は出るが、長い眼で見ると、良い設備も大半遊んでしまい量産降下

  になってしまうワナ。」と言って大笑いした。

 

   量産効果という錯覚が、1個だから原価低減が出来ないという錯覚を生む。

  とかく目標達成のために近視眼になり勝ちである。

  「センチュリーは80台でも他車は月に数万台も売れるワナ。」と言う大野さんのアドバイ

  スがあって、製品の量産効果から工程の量産効果へと私のパラダイムチェンジが起こった瞬

  間である。

   その工程をいくつかの車種でも生産出来る様、治工具も多様化して、同じ様な作業が出来

  るよう標準化し、そのための作業訓練をする。

  キーとなるポイントがその工程での品質保証を作業者自ら実行する、いわゆる自工程完結型

  の品質保証システムのスタートであった。

  (当時はその自工程完結という言葉は使わなかったが)

  21世紀は多品種少量(又は限量)生産になる。

  その時のポイントは、

      工程量産効果

      自工程完結型品質保証

  になると思う。

 

  (近藤 哲夫)

第46話 おもてなし とは

2014年4月08日

  2013年は、2020年のオリンピック招致において招致メンバーの1人の女性がしゃべった

  “おもてなし”が流行語大賞を取った。

   しかし、どうすれば“おもてなし”として外国人に受け入れられるのだろうか?

  外国人と言っても、宗教上の事情などにより一定のものしか食べないなど

  外国人として一括でくくることには問題がある。

   留学時代ホームステイをすると、そのお礼の手紙を出す場合、

  “I have received warmly・・・”とwarmlyを使った記憶がある。

   暖かい、心のこもったご馳走を戴くと、良いおもてなしを受けたと感じるものである。

   現在、県、市、町、村で、より多くの外国人を受け入れるために、どの様な“おもてなし”を

  すれば良いか、担当者は頭が痛いと思う。

   十数年前、広島県のある病院から改善の依頼がありお手伝いをしたことがある。

  その病院は病棟10数室と比較的小さい。人員は院長以下2人の医師と20人位の

  看護師、数人の薬剤師とその補助員と3人の受付で構成されていた。

   問題は『「来院して受付をしてから薬をもらって支払いをするのに2時間以上かかっている」

  という苦情が数多くある。これを出来るだけ小さくしたい』ということであった。

   そこの病院も「患者様には最高のおもてなしを」がモットーであった。

  従って、その病院では「患者の名前を呼ぶ時は、“・・・さん”ではなくて、“・・・様”と呼びましょう。」

  が実際は行われていた。

   私がその病院に行くと、毎朝、全員朝礼で何かを話す事が役割の1つであった。

  「皆さん、1人1人が思っている“おもてなし”とは何かを具体的に書いて下さい。その内

  実行している項目には○を付けてください。」 とアンケートをした。

  今、思いだすと実行しているおもてなしは“・・・様”を付けるのと、患者を丁寧にお迎え

  お見送りする位だったと記憶している。

  ほとんどの方が具体的に“どの様なおもてなしをしていますか”と聞かれると

  答えにくいのではないかと思う。(その点アメリカでは“Good Hospitality!”と相手は誉めるが、

  日本では“ありがとう”だけではないか?)

   そこで、次の朝礼の機会に、日本のメーカーはどの様にしているかを説明した。

  まず商品は、それを使用する際にお客様がまず満足する(顧客満足)、さらに使ってみて

  “これは素晴らしい”と感動する(顧客感動)様な商品開発を行う。

  価格はお客様が購入可能な価格にする。

  そのためには、お客様の具体的な要望(Needs)を徹底的に調査する。

  しかし、一般的にはあまり具体的なNeedsを出すお客様は少ない。

  そこで、お客様の潜在的な欲求、例えば“こんなものがあればいいなア”と言った感じの

  ものをいくつか試作して数十人のお客様に試してもらう。

  そして潜在欲求(Wants)を見る。それにより顧客感動すれば購買意欲が高まる。

   “おもてなし”とは顧客のNeedsやWantsを知り、それに沿える様に行動することではないかと思う。

  繁盛している宿屋や料亭の老練な女将は一瞬にしてお客様のNeeds、Wantsを読み取り、

  それを上回る、いわゆる“おもてなし”を行うことで、店を更に繁盛に導いていると言われる。

   所が1人1人の顧客のNeeds、Wantsは異なるものである。

  この病院では、外来患者1人1人に受付の1人が出向いて「1時間以内に帰りたい」人には

  赤札(ナンバーを付けている)を渡し、「2時間は居て、皆と話をしたい」人には青札を渡した。

  「赤札」は院長が対応し、調剤は赤札ラインを作って、6ヶ月後には目標の1時間以内を達成した。

  顧客は近くに工場、会社が多く、「時間が読める病院」として益々、多くの顧客が来院した。

  「青札」は殆どが老人で、待合室の一区画を「青札」組としてまとめた。

   一番のネックは調剤であった。これについては薬剤師の抵抗もあり、レイアウトの変更までには

  行えなかったが、数人の薬剤師のガンバリで所定時間を達成した。

   この様に民間の“おもてなし”は顧客のNeeds、Wantsに即応すべく、日々努力している。

  一方県の出張所、区役所、市役所、町役場での住民に対する“おもてなし”は異なる場合がある。

  これはある県の出張所での出来事である。

  ある日、12時になると受付3人の内1人を残して2人が居なくなるのである。

  待っている人々はまだ数人いるのに!

  「どこに行ったのか?」と私が聞くと、担当の主任が

  「食事です」と答えた。「お客はまだ居るヨ」と私が言うと、「きまりです」ときた。

  その決まりは誰が決めたのか?多分自分たちで決めたのだと思う。

  彼ら(彼女ら)は「ルール通りやってます」と必ず答えるはずである。

  窓口業務は官民問わずどこにでもある。

  どうか“おもてなし”は民間だけでなく官も具体的に実行して戴きたいものである。

 

  私流の定義

  “おもてなし”とは顧客のNeeds、Wantsを知り、それに沿えるよう行動することである。

 

  (近藤 哲夫)

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