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改善エッセイ

第95話 日本人はいつ頃生まれたか -1

2016年4月26日

 片山一道著(ちくま新書)「骨が語る日本人の歴史」を読んだ。

 本の裏には一般にその著者の略歴を載せるものだが、

 この本にはそれがない。

 しかし類推するに京都大学で研究したことがある様だ。

 「自分の師匠は京都大学教授」と文章の中にある。

 また東京大学の考古学人類学派への反論(?)も多く出てくる。

 いずれにせよ関西派考古学人類学者らしい。

 

 一気に読んでまず感じたことは、自分のこれまでの認識が全く

 異なっていた、と言う事である。

 例えば「南の道」(柳田国男)である。

 日本人は「稲の道」と共に南から日本にやってきたと信じていたと。

 ところが「海退期」でも沖縄と南九州は海が残っていた。

 当時は「舟」は無かった。

 (海退期は最大で120mも海面が低下した。従って台湾から

   沖縄までは半島の様に歩いて行けた)

海退期では朝鮮半島と対馬は陸地として繋がっていたと考えられる。

 

地球の氷河期を見ると、氷河期には海は「海退期」として水面が

低下し、温暖期には氷河の氷が溶けて水面が上昇し、いわゆる

「海進期」になる。

 

また、縄文人が南から来てその混血として弥生人が生まれた。

故に日本人として日本で生まれたのは弥生人であり、それ故

“倭人”と言うと信じていた。これもどうやら誤りらしい。

 

骨考古学について、片山さんの専門分野であり、イギリスで

1960年頃生まれ、日本では1990年頃盛んになった

比較的新しい学問分野である。

「骨考古学とは、考古学の遺跡で発掘される人骨を資料に

して、それらの遺跡を残した人々の人物像を具体的に

リアルに復元するとともに、彼らの生活像を実証的に

推測する研究分野である」

 片山先生は『骨考古学は「書斎で考えられる考古学ではナク」

 「足で考える考古学」である』と決めつけている。

 この点トヨタ方式のスタートの時期に類似している。

 私はこれまでの知識は書斎考古学から生まれたもの

 だということだった。

 多くの日本人(特に関東人)は私の知識と同様では

 なかったか。

 

 まとめ

 まずは片山先生の画く全体像を私なりに画いてみたい。

 個々の時代のトピックスは次回以降にする。

 

約5万年前

(時代)旧石器時代:「静」の時代

    (特徴)樺太、北海道は本州と陸続き、朝鮮半島と

            対馬も陸続きで、これらの地方から少しずつ

            移住したいわば「ふきだまり」

 (推定人口)約5000人(終末期)

 

約13000年前

    (時代)縄文時代、新石器時代:動乱の時代(後期)

    (特徴)「土器」「舟」の発明、「海進期」

            朝鮮半島との「海の道」が出来た。

            日本海に暖流が流れ、本州の日本海側が

            開かれた。

(推定人口)早期約2万人、中期約26万人、

            後期約16万人

 

約2500年前

    (時代)倭人(弥生時代)、「開国」の時代

            文明開化

    (特徴)特に朝鮮半島からの移住

            西日本最大100万人(?)

            稲作を始め織機、染物など新文明が導入

(推定人口)中期約60万人、末期約220万人

 

約1700年前

     (時代)倭人(古墳時代)

     (特徴)貴族と庶民の身体差(階層性)が顕著になる

 

約1300年前

    (時代)中世日本人(奈良、平安時代)

    (特徴)火葬広まる(骨が少ない)

(推定人口)559万人

 

約800年前

    (時代)中世日本人(鎌倉、室町時代)

    (特徴)戦乱による人骨多数(鎌倉)

(推定人口)692万人

 

約400年前

    (時代)近世日本人(江戸時代)

    (人口)1227万人(1600年)

 

 150年前

    (時代)近代日本人(明治、大正期)

    (人口)3300万人(明治6年)

            5506万人(大正9年、1920年)

 

 70年前

    (時代)現代日本人(昭和、平成期)

    (人口)8300万人(昭和25年)

           12557万人(平成7年、1995年)

 

身体の変化の特徴

時代によって身体の変化で著しく多いのが

①身長

②顔立ち

だそうである。(片山)

身長は食事のバランスと適切な運動によって決まる様だし

顔立ちも食事のバランスによって決まると言われている。

①身長

縄文 (出土)岡山県    (身長)159cm

弥生 (出土)近畿地方  (身長)160cm

古墳 (出土)近畿地方  (身長)161cm

鎌倉 (出土)鎌倉      (身長)159cm

江戸 (出土)京都      (身長)158cm

明治 (出土)全国      (身長)158cm(1800年)

昭和 (出土)全国      (身長)165cm(1940年)

平成 (出土)全国      (身長)171cm(1990年)

*旧石器時代の人骨が本土では完全な型で発掘されていない。

  あるのは沖縄のみ。

 

②顔立ち

縄文人  「鼻骨」が大きく「下顎骨」が頑丈、「歯」は強い

弥生人以降  この3つはだんだん少なくなり、歯は「反っ歯」

           「歯」が小さくなり、 「親知らず」がない様になる

どうやら縄文人は日本で生まれ、日本で育った様だ。

また発掘によって、弥生人は「移民的日本人」は西日本に多く

発見され、近畿地方では「縄文人的弥生人」が多く見つかっている。

縄文人と弥生人はある年数を経ながら、うまくミックスしていった

と考えられる。(片山)

決して関東の先生が言う様に朝鮮から移民が100万人も移住

した訳ではない。

また移民住民達はそれぞれかたまりを作り、主として博多、唐津

などに住んでいた思われる。(片山)

また縄文人の顎が強いのは歯で噛み砕くことを多く行われていた

のではないか(片山)と推測出来る。

また成年になる通過儀礼的なものもあったのではないかとも推測

される。

 

(近藤哲夫)

第94話 電力について

2016年4月12日

 ①今年で5年目の3月11日が来た。

  3月2日の日経新聞に「追跡原発」の特集記事が出た。

  もう一度原発、電力を考える上で私は良い事だと思う。

  しかし、昨今の日本はそれよりも、電力の自由化で夢中に

  なっているのではないか。

  やれガス屋が電力も扱いますとか、ソフト屋が私の所も電力

  を扱いますとか、とにかくカシマシくてうるさい。

  一方では電力を使い放題に使いながら、一方では放射能に汚染

  された土壌なでのゴミの一時保管場所に反対する。

  全くエゴそのものである。

  反対するなら「私は今後一切電力を使いません。」と

  宣言すべきである。

  私はこの問題は電力使用者が負担すべき事だと思う。

  一括してまとめた方が行政としてはやり易いかも知れないが、

  一箇所保管はそこの住民にとっては風評被害も出てきて、

  地価は下がるは、野菜は売れないはではタマッタものではない。

  一番の電力使用者は工場か、人口密集地である。

  そこの地下の300mの所に集積所を作ったら、というのは

  少しホラ吹きか、乱暴か。

  例えば東京だったら東京都庁の地下300mに作るとか、

  地方都市だったら県庁の地下に作るとか、

  投資は高くなるが「利用者負担」の原則は守られる。

 

  しかもこのゴミの放射能は年々減衰していく。

  宮城県が再計算した様に、基準値に達するには10年後で

  9割減になるという。

  所が風評被害を撒き散らすオジチャン、オバチャン達は

  原発と原爆を混同している人が多い。

  原爆は広島、長崎の悲劇が殆どの日本人のトラウマになっている。

  そのトラウマに上乗せしたのが今回の福島第一原発の水素爆発

  による放射能の拡散である。

  「全く原爆と同じ」と錯覚したオジチャン、オバチャンが私の

  廻りに数多く居た。

 

   電力を使う以上、今後も必ずリスクを伴う。

   その保全に勿論国がその大部分の役割を分担するが、

   我々1人1人も「自分の命は自分が守る」、

   その為のリスク負担をすべきだと思う。

   それが「利用者負担の原則」である。

 

 ②さて現在の福島第一原発の状況はどうだろうか。

   日経(3月2日)によると以下の通りである。

   4号機    11年3月は定期検査の為停止中

                 核燃料  1535体中現在は0

                11年3月15日 水素が流れて爆発

 

  3号機     15年8月にプール内の大型機器撤去

                   核燃料   566体

                  11年3月14日  水素爆発

                   まず3号機から17年度に撤去スタート

                   髙い放射能と細かいガレキの撤去が最大の難関の1つ

 

   2号機    核燃料  615体

                   爆発なし

                  その分放射能高い

                  撤去は20年度よりスタート

 

   1号機    核燃料  392体

                  3月12日に水素爆発

                  撤去は20年度よりスタート

  ・最大の難関はデプリ(溶けた核燃料)の取り出し(3、2、1号機)

    これには30~40年の時間が掛かる

  ・1979年の米国スリーマイル島原発ではデプリは

    圧力容器内にとどまっていた。

  ・1986年ソ連チェルノブイリ原発ではデプリは建屋内

    にとどまっている。

 

   第一原発を巡る主な経緯

  2011年3月11日  13mの津波到達、全電源喪失

                                       炉が冷やせなくなる

                  3月12日   1号機炉心の海水注入開始

                  5月     東電「炉心溶融」を公式に認める

                  6月     野田首相「事故収束」宣言

  2012年6月    東電事実上の国有化が決定

                  9月    旧原子力安全保安院解体、原子力規制委員会発足

  2013年9月    首相「汚染水の状況は制御されている」と

                             国際オリンピック委員会で発言

  2016年2月    凍土壁の設置工事完了(470億円)

     

   冷却水は今も1日300トンを炉に注いでいる。

   ALPSの稼動により汚染水の処理は進んでいるが、

   凍土壁が本当に切り札になるかどうか不明だと言われている。

   (原子力規制委員会)

 

   5年前の当事者3人が述べた記事があった。

   大熊町町長の渡辺氏は「空き巣」被害が多発し、責任を感じたらしい。

   人間は何をやらかすか分からないナアとつくづく感じる。

   それも人間かもしれない。

   当時首相補佐官だった細野氏は「収束」という言葉は使わない方が

   良かったと反省している。

   政治家としてはナイーブだナア。

   当時政府事故調の委員長だった畑村先生は、

  「現象をきちんと見れば人災そのもの」と断定している。

  「電気を使いたいだけ使うという利便性のみを享受しながら、

    そのリスクを考えていない」

  「放射能の被害をただ恐れるだけで数量的リスクをきちんと

    捉えていない」

   全く同感である。

 

 ③地熱発電

  COP21で今世紀後半までに温暖化ガスの人為的排出量を

  「0」にする目標がパリ協定で採択された。

  日本政府は2030年までにCOを出さない再生可能エネルギー

  の比率を20~24%に高める方針である。

  再生可能エネルギーは風力、太陽光、地熱があるが、風力、太陽光は

  地熱に比べて天候、昼間に限られ不安定である。

  地熱は安定しているが、その8割が国立公園、国定公園の中にあり、

   全電源の0.3%、52万kwにとどまっている。

   ところが産業技術総合研究所のデータによると、

 「世界の潜在的な地熱発生量」は

    1位 アメリカ          3000万kw

   2位 インドネシア  2779万kw

   3位 日本               2347万kw

   4位 ケニア            700万kw

   5位 フィリピン       600万kw

          メキシコ           600万kw

   7位 アイスランド  580万kw

 

  日本の潜在能力は3位で原発20基分に相当する。

  また、地熱発電タービンの世界シャアは7割を占めている。

  現在インドネシア スマトラ島のサルーラ発電所(世界最大級)は

  伊藤忠商事などが出資で進行している。

  (事業費16億ドル、出力33万kw)

 2000mの深さの井戸を30本掘るのに16億ドルとは

 投資が風力、太陽光に比べて高いのが難点である。

 まして3000m以上掘って直接マグマ層に掘るとなると

 もっとコスト高になる。

 最近アメリカはシェールガス、油田開発で深堀技術が進んで

 いると言われている。

 それらの技術の導入によって、斜め掘りを区域外から更に

 進めることも可能になるのではないか。

 

 日本には地熱の様な潜在的に高いレベルのエコ資源に早く

 気付くべきであると思う。

 確かに地熱にもリスクがある。

 例えば温泉が枯れることも発生するだろう。

 しかし原発のリスクに比べてみてどうだろう?

 電力の消費者の1人としてどちらを選択するか。

 これは1人1人が考えるべきことである。

 

(近藤哲夫)

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