私どもケーズエンジニアリングでは、トヨタ生産方式の考え方による改善コンサルティングを通じ、数多くの改善リーダーを育成するサポート活動をさせて頂いております。

改善エッセイ

第103話 歴史に学ぶ -5 (地球の歴史に学ぶ)

2016年8月24日

-大河内直彦氏の『地球の履歴書』(新潮選書)を読んで -

 

この本を読むのは二度目である。

一度目は昨年(2015年)の11月、私は入院前で、

病気の機嫌の良い合間を見ながら読んだ。

今回は再読である。とにかく面白い。

今回も読み始めて終わるまで半日位で読了している。

履歴書であるので、全て細かくは書いていない。

エッセイ風にポイントのみを強調しておられる。

従って章を追って読んでも良いし、また自分の興味の

ある章から読んでも結構楽しい。

また文章も読んで楽しい。

 

1.例えば第一章の始まりは

「星は大音響と共に生まれた。・・・それも45億7000万年前

という、とてつもなく遥か昔のことだった。

それでも宇宙開關の鐘が鳴り響いてから既に92億年あまりの

時が流れていた。・・・」

それは45億3000万年前火星ほどの大きさをもつ惑星が原始地球に

衝突したのである。

その時の音だった様である。(誰も確認していないが・・)

秒速4kmの巨大な物体同志の衝突をコンピィーターシミュレーション

すると、両方の惑星は合体し、その時発生する大量の破片が飛び散った。

そして数十年後、地球を周回する月が誕生した様だ。

地球はドロドロになり、鉄やニッケルなどの金属成分はまず沈み、

地球の中心部に集まった。

後にこれがコアを呼ばれる部分になった。

時が過ぎると大衝突の余韻もなくなり、地球の持つ熱エネルギーは

徐々に宇宙に散逸していった。

温度が下がるとケイ素やマグネシウム等が沈殿し始め、これが

マントルを形成した。

最後に溶け残った物質も続いて固化して、地殻を形成した。

この様にしてドロドロだった地球は、コア、マントル、地殻という

三重構造の固体の星に生まれ変わった。

この頃の水の大部分は水蒸気として地上にはなく、

雲として空中にあった。

地上の表面温度は1000℃位だった様だ。

海が出来るのは、原始地球が生まれてから5億年位

経ってからである。

しかし、この海によって生命が生まれ、やがて人類が生まれた。

海水の体積は14億立方mに対し、固体地球は1兆立方mであり、

地球の700分の1しかない。

ほとんど表面しか覆っていない。

 

2.アルフレッド ウェゲナーの大陸移動説は当初なぜ

      認められなかったか

ウェゲナーはその著書「大陸と海洋の起源」において、

各大陸間は広がりつつあると計算した。

例えばグリーンランドは年間11m~36mのスピードで

ヨーロッパ大陸から離れつつあると算出した。

当時の地球物理学は収縮説が中心であった。

彼はそれを否定したのである。

収縮説では年と共に地球は冷えつつあり、それによって

収縮が地球表面に発生する。

(それも左右方向ではなく上下方向に動くと考えられていた)

ウェゲナーは気象学者であり天文学者であっても

地球物理学者ではなく、専門の地球物理学者とは距離を置いていた

と言われている。

彼はドイツ政府の援助により、グリーンランドの実際の移動速度を

計測しようとグリーンランドに行った。

1930年の11月キャンプ地に引き返そうとして遭難する。享年50歳。

 

最近の計測によれば、グリーンランドがヨーロッパから離れていく

スピードは年間2cmである。

これは20世紀の初めの経度測定の精度はウェゲナーが考えていたより

ずっと悪かったと言える。

現代ではウェゲナーの説はプレートテクニクスと呼ばれていて、

公認されている。

それは水平方向の移動だけでなく、プレートと呼ばれる岩盤は

薄いが、移動と共に熱が発生し、プレートの下の岩石層を

溶かすために、少しずつ厚くなっていく。

(溶けた岩がプレートにくっつく)

例えば東太平洋を南に走る海嶺は、頂の水深は

3000~4000mである。

しかし生まれてから1億年を経た古い海底は

水深5000mを超えている。

即ち1億年の間に1000~2000m沈んだことになる。

これを1年に直すと0.05m/m~0.01m/mの速度と

いうことになる。

 

3.白亜の時代

白亜は黒板に使う「チョーク」のこと :石灰岩である

 

日本では石灰岩地帯は海外に比べて少ない。

山口県の秋吉台、秩父の武甲山、伊吹山くらいである。

近くにセメント工場がある。

 

石灰岩を岩伐にした歴史的建造物は日本には少ない

(殆ど0)が、海外には数多くある。

 (パリ凱旋門、ロンドン塔、ダージマハル等)

また、石灰岩は地中深くで地熱の作用を受けると

変質して大理石になる。

 

フラスコ画は乾ききっていない漆喰(石灰岩の一種)の上に

画を描く画法でミケランジェロをはじめ、イタリアルネッサンス

の画家が利用した。

この画法は末永く保存の効く画法である。

15000年前のクロマニュヨン人が画いたと言われる

フランス南部のラスコー洞窟は石灰岩の洞窟である。

天然のフレスコ画である。

 

白亜紀とは1億2000万年前~9400万年前までの比較的

短い期間にも関わらず(地球史46億年の僅か2%弱)多くの

モノを生み出している。

石灰岩(炭酸カルシウム)と石油である。

石油はこの時代の海底に広く溜まった堆積物に含まれる

有機物が自然環境の中で「熟成」されたものである。

次が大型の生き物である巨大な恐竜、直径数mもある

巨大アンモナイト、また花を咲かせる被子植物が出てくる。

この時代は二酸化炭素ガス濃度が今日より一桁高く、

2000ppmもあった。

これにより「温室効果」が地球を覆っていた。

 

白亜紀の終焉

直径10kmの巨大な隕石がメキシコ ユカタン半島の先端

の海上に落ちた。

秒速15kmで地表面に対し20~30度の浅い角度で

南東から飛来した。凄まじい衝撃で地震エネルギーに換算すると

マグニチュード11(東日本地震の約1000倍)

コンピューターシミュレーションによると高さ300mの津波

が地球を何度も周回した。

これによって大陸の内部まで海水が押し寄せ、恐竜を始め多くの

生き物は忽然と姿を消した。

また衝突した隕石によって大量の塵が大気中に巻き上げられ、

何年にもわたって暗黒の帳が世界を包んだ。

これによって植物の光合成量が大きく低下し、食物連鎖が切れて

多くの生物が食料不足のため絶滅したと言われている。

しかし当初この隕石説は反論が多かった。

1988年クレーターがユカタン半島沖で発見され、隕石衝突

は実証された。

私達の祖先である哺乳類は生き延びた様である。

逃げ足が早いのかなァ。

 

 

(近藤哲夫)

第102話 “日本人の考え方 ”とは

2016年8月09日

  「日本人の考え方と世界の人の考え方」という本を読んでみた。

  世界価値観測調査(WVS)は、話には聞いていたが、せいぜい

  現在のマスコミの行っている調査の様なものだろうと思っていた。

  これまで私が接した社会科学の多くは(もっとも1980年代の話だが)

  データ総数、データサンプリングの方法、サンプリング用紙などは

  一切明らかにされず、結果のみの発表が多かった。

  私ども科学技術系とは「大分異なるなァ」と不信感を持ったものである。

  私どもが工場実験を行う際でも、まず予備実験を行って、仮説の検証を

  ある程度行ってから、本実験に入るのが常であった。

  本実験では工場内、外の環境条件、データ総数、データの割り付け

  (多工程にまたがる場合)、サンプリングの方法(誰が、いつ、ランダムか、

  シークエンシャルか等)サンプリング用紙は後で解析し易い様なフォーム

  と有効桁数を予め決めて行った。

  それでも有意差1%(3シグマ)では有意差であるが、5%有意差(2シグマ)

  では再度テストという決断を下していた。

  (有意差とは明らかに差があるということ)

  サンプルサイズ(サンプル総数)は最低でも100以上である。

  工場実験の場合、多くは計量値(連続値)であるので、100でも

  推定可能であるが、計数値(離散値:1つ1つが非連続でバラバラ)

  でもあるので、サンプルサイズは少なくとも1000以上でないと、

  3シグマは2~3%にならない。

 

  日本の社会科学の私の認識は、1つはサンプルサイズが少ないという

  ことであった。

  社会科学は私も学生時代にアルバイトを行ったが、サンプルを探るのに

  お金が掛かるのである。

  例えば5年に1回実施される日本の国勢調査でも一軒、一軒、訪問して

  聞き取り、聞き取りが拙いと再度訪問、今度は相手が留守といったことに

  何度か出会ったものである。

  従ってデータの質の精度は下がるし、お金は掛かる。

 

  社会科掛けのサンプルサイズは質を良くしようと思えば、サイズは少なく

  せざるを得ない。

  そうなるとデータの(統計的)精度は低くならざるを得ない。

  最近では国やその他のNPOからの資金が調達できて、サンプルサイズは

  多くなり、データ精度も良くなってきたと聞いている。

  

  WVSは日本学術振興会のサポートを受けていて、データサンプルは

  1000個以上になっていて、データ精度は向上している。

  (2%以内になっている)

  データの質も同一質問様式と世界統一しており、質問もYES、NOと

  自分の思いを10点満点で評価するといった比較的簡単にしている。

  更にはすぐ分析可能な様に、質問内容が相当具体的になっている。

 

  日本のデータも1990年以降も時系列分析可能な様に同一質問を

  行っている。

  私のこれまでの1980年代の社会科学のデータの認識を全く変更

  するものであった。

  

  最もWVSの目的の1つが社会科学の共通のデータの提供にあるので、

  このデータを使用して、他の要素と組み合わせて更に理論化させれるのは

  其々の学者、研究者の役割であろう。

  

  WVSの1つの目的は、A.マズローの欲求5段階説の検証にあると

  言われている。(イングルハート)

  現在(2010年現在)では、マズローの仮説はほぼこの世界では

  妥当であると評価されている。

 

  この本を2度ほど読んだ。

  詳しくは近藤塾8月、9月で説明する予定であるが、

  他国と日本の違いは、

  「わからない」「NA  ノーアンサー  答えない」

  が多いと言う事である。

  それと

  「全く賛成」や「全く反対」

  の極端が少ないことである。

  ほぼ中央に評価している。(「賛成」と「反対」)

 

   めでたさも  中くらいなり  おらが春      小林一茶

 

(近藤哲夫)

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