私どもケーズエンジニアリングでは、トヨタ生産方式の考え方による改善コンサルティングを通じ、数多くの改善リーダーを育成するサポート活動をさせて頂いております。

改善エッセイ

第73話 2040年の新世界 -2

2015年5月26日

 この本の私なりに褒める良い点は、現在(2015年)の3Dプリンターの問題をはっきりと提起していることである。

 確かに3Dプリンターは夢がある。

その夢は蒸気機関ほどではなくともモノ造りにとってみれば大いなる夢である。

しかし信頼性1つ取ってみても、3Dプリンターがいわゆる不良、故障がほとんど0になるのは

ボイラーと同じく200年位必要ではないかと思う。

人間の能力がここ50年で急速にレベルアップしたとはとても思えない。

技術の急速な発展に人間の能力が追い付かない。

 確かにショートスパンでの部分最適はあるいは可能かもしれない。

しかし地球規模でのロングスパンの全体最適にはまだまだ人間の能力は

幼稚のレベルではないかと思う。

まだまだ直観力を養うべきだと思う。

「年を経ると直観力は増加する」と昔の達人が言ったという。

そう言う意味では私の精神年齢はまだまだ未熟であり、これからも学び続けなければならない。

200年も経るとボイラー技術と同様、人間の技術も一応「枯れた技術」に成熟するかもしれない。

 

 さて、3Dプリンターが2011年にはアメリカでは既に家庭用が業務用(工業用ではな

いが中小企業で使用されているのみでの業務用)を上回っている。(第72話参照)

(工業用の出荷台数は不明)

しかしその勢いはipad程の勢いは見られないと言う。

その理由の1つがiphone向けの人気のゲームソフトの様なアプリケーションがない。

テクノロジーではなくキラーアプリが無いからだと言われている。

何千万人も引き寄せる様なアプリケーションが必要になってくる。

それにより、家庭用が爆発的に売れると言う期待がある。

そのキラーアプリは何か?  趣味用?  学習用?  ゲーム?

 

 クラウドマニュファクチャリングとは

中小企業の分散型ネットワークを土台に、さまざまな製造の手段、機能をインターネットへ

つなぎ、自動的に管理・制御出来る様なシステムの様だ。

 中小企業ではないが、北米トヨタの場合では部品の物流に電子カンバンを使い始めた。

これはクラウドマニュファクチャリングの一部(かもしれない)の物流の電子制御に他ならない。

(広いアメリカではカンバンの持ち運びに時間が掛かる)

 これに3Dプリンターを使用するのは当たり前かも。

ただし生産物は1個というプロジェクトだろうな?

日本の大田区鎌田や東大阪市では、そこの地域の中小企業が集まり、

「下町ロケット」とかオリンピック用のソリ開発をやってます。

あれがアメリカという広いエリアになると、クラウドマニュファクチャリングという名になるのかなァ。(半分冷やかし)

 家庭用3Dプリンターが普及すればするほど、DIY(毎日使う日用品)がカスタマイズされ、

新しい商品価値が追加されるという期待があると言う。

 最近は少し台所に立つ機会が増えたが、使用している道具はどうも使いかってが悪い。

しかし亡妻にとっては使い勝手が良かったのではないかと思っている。

 確かに3Dプリンターがここにあれば、自分用の道具を造りたいという思いはある。

 3Dプリンターの本質は製造プロセスであって、プリンティング(印刷プロセス)では

ないのである。

「3Dプリンティング」とう名はどうもマーケティング用語らしい。

 

 二系統の3Dプリンター

第一系統の3Dプリンター :原材料の層を積み上げてモノを作る

「選択的積層型プリンター」:原料を層状に積み上げる

        原材料は液体、ペースト粉末

        ノズル等で噴射、スプレー、絞り出す

       一般に家庭、学校、オフィスで使われる

第二系統の3Dプリンター :原材料を結合してモノを作る

 「選択的結合型プリンター」;熱や光で粉末や感光性ポリマーを固める。

                     光源はレーザー等

  SL法(光造形法):紫外線感受性プリマー(紫外線を浴びると硬化する)

                   長所:レーザーが速くて正確

                    短所:未硬化の感光性ポリマーの蒸気は毒

           感光性ポリマーは熱可塑樹脂に比べて耐久性に劣る

  LS法(レーザー焼結法):レーザーで粉末表面をトレースし、溶かす

              長所:溶けない粉末はリサイクル可能

                           粉末材料としてナイロン、スチール、青銅、チタンなど

              短所:完成品の表面ブツブツ状態

                       一度に複数の種類の粉末をプリントできない。

                       ある種の粉末は爆発の可能性あり(家庭では使用不可)

                       高温であるので冷やす必要あり

   結合型は工業用で現在使用されている様だ。

この他デザインソフトの問題、食のプリンティングや法律問題は面白いが、

本を読んでいただければ幸いです。

(近藤 哲夫)

第72話 2040年の新世界 -1

2015年5月12日

このタイトルは「2040年の新世界」という名前の本である。

東洋経済新聞社ホッド・リプトン(コーネル大工学准教授)、

メルバ・カーマン(技術関係のライター兼ブロガー)の共著である。

 一昨年は2030年の世界が出たので、はじめこの本を見たのは

多分2030年の続編かと思い手に取った。

所が全く異なっていた。

英文のタイトルは、  FABRICATED;The New World of 3D Printing である。

3Dプリンターの将来像を描いたものである。

初めはガッカリしたが、後は夢中、473ページを一気に読んでしまった。

私にとって興味があったのは3Dプリンターの現状の使われ方であった。

 2011年の3Dプリンターの販売台数は全世界で約13000台であり、うち業務用が

約6000台、家庭用が7000台である。家庭用が追い越している様だ。

家庭用は5000ドル未満とのこと。

又、世界の販売シェアはアメリカ40%、日本10%、ドイツ10%、中国8.5%(P58)とのこと。

アメリカでは10人未満の会社がアメリカ全メーカーの半分もあり、そこに3Dプリンター

の需要が今後多いに期待されている様だ。

カバーのプロタガンダの文句に「蒸気機関や電信に匹敵する革新的テクノロジーの登場」と

あった。

3Dプリンターは誰がパテントを取ったの?

 先日、夕食を取りながらたまたまNHKのクローズアップ現代を眺めていた。

そこに35年前に3Dプリンターを発明した日本人が出演されていた。

発明しても会社は売れるかどうか分からず、その特許は休眠となったと言う。

 確かに会社にとって売れる化どうか分からない商品はなかなか生産しようとはしないだろう。

食品の場合、売れるかどうか分からない場合はまずマーケットを小さく定めて、その近くの

工場で試作をして実験販売したものである。

35年前と言えば、70年代末から80年初め、日本はほとんどの業種で規格大量生産、

販売の最盛期であった。

このとき3Dプリンターを売り出してもおそらく売れなかったのではないかと思う。

 そのように思う1つの理由は、その頃、卓上ロボット、小型搬送ロボットがいくつかの

中小企業で開発、販売されたが、現在では殆どが廃業または大企業へと吸収されてしまった。

どんなに良いモノでもタイミングが重要である。

 確かにスリーピングパテントは企業にとっても、国家にとっても解決すべきテーマの1つである。

パテントをオープンにするか、クローズにするか、またはオープンアンドクローズにするか、

企業の将来に関わる重要課題である。

 本当に企業の重大機密に関わる事案はパテントを出さない、クロ―ズにするのが当たり前

であるが、市民感覚から言えばなんとなく割り切れないものになる。

 

 3Dプリンティングの10の特質 (P34~P39)

特質1.見源に複雑なモノが作れる

特質2.無限のバラエティ

               現状の機械は有限

特質3.組立が要らない

               サプライチェーンの短縮

特質4.リードタイム0

              オンディアンドで可能

特質5.デザインの幅が無限

特質6.技能が無くても製造出来る

特質7.コンパクトでポータブルな製造設備

特質8.ゴミになる副産物が少ない

特質9.素材が無限に混ぜられる

特質10.物理的に複製が正確

 

 この特性は現在ではない。

2040年に実現する(と期待している)としている予言、賭けとして受け取って欲しいと

している。

それにしても「無限」を4か所も使用している。

すぐに、強度は?信頼性は?コストは?・・・・

とクエッションマークが頭に浮かぶ。

 

 アメリカ人らしくすぐに右か左かを決めたがるが、真ん中ということもあるのではないか

(日本の古い人の考え)とも思う。

 

個別のモノ造りと大量のモノ造りがやがては棲み分けが、自然と同じく、それこそしぜんに

おこなわれるのではないかと思っている次第である。

 

(近藤 哲夫)

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